演劇公演 けいせい仏の原
2007.06.15 by mikuni.minato
〜近松門左衛門が憧れた地、三国湊で 300年ぶりの里帰り演劇公演〜
けいせい仏の原について
「けいせい仏の原」は、福井県出身と言われる近松門左衛門が、初代坂田藤十郎に書いた、歌舞伎の最高傑作と言われている作品で、三国湊の遊女「三国小女 郎」がモデルとなり、本公演会場であるみくに文化未来館の隣に建つ「月窓寺」を舞台として描かれています。当時この作品は、大変な大入りとなり、その後、 歌舞伎作品のタイトルに「けいせい」とつけるのが流行ったほどだそうです。 「けいせい仏の原」の脚本は現在発見されておらず、筋書き「絵入狂言本」(今で言うノベライズ本)が残されているのみです。 時を経て、1987年の近松座第六回定期公演において、現・四代目坂田藤十郎、当時・二代目中村扇雀主催、脚本・木下順二、補訂・松井今朝子、演出・武 智鉄二というビッグネームの元、数年かけて複数の資料をもとに舞台台本が復元され、約290年ぶりに上演されました。 本公演は、絵入狂言本を現代語訳した上で、脚本をつくり、三国の地で、三国版けいせい仏の原として、約300年ぶりに里帰りいたします。 キャストは10名。東京から5名、三国から5名が出演し、三国町民と演劇界の鬼才中島陽典とのコラボレーションによる演劇公演となります。
40日間のレジデンス
本公演は、40日間にわたり稽古が行われます。東京から演出家・俳優・スタッフが、三国町に滞在しながら、三国の情緒と人情を浴び、三国湊の俳優、スタッフと共に作品を作り込みます。
ストーリー
越前国の殿様梅長刑部には二人の息子がいた。 役立たずだが懐深く、女にモテモテの兄・文蔵と、そんな文蔵を妬み嫌う弟・帯刀。 文蔵は竹姫という許嫁がいるにもかかわらず、三国No.1!の花魁・今川と恋仲になり、子供まで設けていた。 ある日、帯刀の陰謀によって、文蔵は阿呆払いの刑に処され、放逐されてしまう。 無一文になった文蔵が向かった先は、かつての恋仲・奥州のもとだった。 帯刀の企みは進み、父・梅長刑部、文蔵と今川の子供にまで手が伸びる。 今川は愛する文蔵を追い、恋敵、奥州のもとに乗り込んでいく。 炸裂する恋の渦! そこに絡まる竹姫とその家来・一角との身分違いの恋、文蔵を慕う家来・望月の葛藤、 帯刀に取り込まれる今川の父・乾の悲哀。 幾十にも重なる人の情と業、そして営み。 ラスト、それぞれの選んだ生き様とは…。
公演情報
●原作 近松門左衛門
●作・演出 中島陽典
●公演日時 9月8日(土) 開場19:00 開演19:30 9月9日(日) 開場18:00 開演18:30
●会場 みくに文化未来館 (福井県坂井市三国町神明1-4-20/tel. 0776-82-7200)
●チケット 前売2,500円(全席自由) 当日3,000円(全席自由)
●チケット予約とお問い合わせ
その1 みくに文化未来館 tel. 0776-82-7200 fax. 0776-81-4323
その2 三國湊座 tel. 0776-81-3921 fax. 0776-81-3921
その3 NPO法人三国湊魅力づくりPJ mail. keisei[★]mikuni-minato.jp
●出演
文蔵 加藤幸夫(TOKYO)
今川 定村文恵(TOKYO)
奥州 薬袋いづみ(TOKYO)
帯刀 大林和晃(TOKYO)
望月 榎ちひろ(深海シガレットムーン:MIKUNI)
一角 沼畑真(海猫ボーイズ:TOKYO)
竹姫 東みゆき(MIKUNI)
梅長刑部 岡田利雄(MIKUNI)
黒子 源藤一代(深海シガレットムーン:MIKUNI)
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乾 湯浅弘祥(MAFF:MIKUNI)
●主催 財団法人坂井市三国町文化振興事業団/NPO法人三国湊魅力づくりPJ
●共催 nakajima theater company
●後援 福井新聞社
●助成 芸術文化振興基金/財団法人アサヒビール芸術文化財団
●スタッフ
舞台監督 海老沢栄 /舞台監督補 氷見泰博 /照明 佐藤啓 /照明アシスト 櫛田晃代 音楽と音響 suzy-9(Sound-Master)/美術 海老沢栄・青山円 /小道具 大町真弓・木谷倫子 衣装とヘアメイク 早川すみれ /衣装アシスト 山本桜里/メイク 立山梢 衣装協力 十郎信子(花つばき) /映像 坂本大三郎 /殺陣アドバイザー 上田雄大 歌指導 若杉哲史 /カラオケ指導 鳥越賢二(AMUスタジオ)現代語訳 和久田理人 舞台スタッフ 馬上免耕典(深海シガレットムーン)・出蔵博人 宣伝美術 溝田恵美子/中矢あゆみ /宣伝美術イラスト nisico 製作 PTP inc.
●協力
ミズキ事務所/ケイセブン中村屋/石響/松村典尚/淵上周平/星野ロカ/八田朋子/松原富夫/赤澤恒徳/出嶋昇/林治巳/玉島吉茶/深海シガレットムーン/劇団百年イラチカ/MAFF/竹よし/虹の会/カルナ/三國湊座/エムアイテックフクイ(順不動)
けいせい仏の原 中島陽典
昨年11月、福井県の三国という湊町で「寿歌」という演劇公演を打った。 キャストとスタッフは、東京と福井の合同チーム。 東京発の地方での演劇公演は数多くあるが、東京から地方に出向き、地元の方達と一緒に作る公演はあまり聞いたことがない。 文化の違い、生活環境の違い、漂う空気の違いetc. お互いもどかしさや苛立ちを抱えながらの演劇制作。 東京のキャストは一ヶ月、三国で共同生活をしながらの稽古を行った。 演劇はありとあらゆるものとの闘いの場である。 自分VS自分、演出VS役者、役者VS役者、演出VSスタッフetc. そして板の上では観客やそこに巣くう魔物との闘いでもある。 迎えた本番はいろいろな意味で予想外の反応だった。 いわゆるアウェーの洗礼を受けたのだ。 多くの反省を宿題に、三国をあとにした。 もう二度とこの地で芝居を作ることはないだろうな・・・。 東京に帰る列車の中、一つの作品を作り上げた侘びしい自己満足と、アウェーの風を読み切れなかった悔しさとが入り交じり、涙がこぼれそうになった。 それから数ヶ月後、 「来年の9月、三國の未来館で近松門左衛門の『けいせい仏の原』という作品を作ってみませんか」 と、プロデューサーの福嶋氏から言われた。 三國で演劇を作れるチャンスをもう一度いただけたのだ。 こんな嬉しいことはない。 前回の反省を挽回すべく、再び演出を引き受けることにした。 今度こそアウェーの風を心地よい風にしたい。 しかし困ったことがある。 実は何年も演劇に携わっているにもかかわらず、近松門左衛門も『けいせい仏の原』という作品も詳しく知らないのだ。 さっそく下調べをしていると、近松の言葉にふと目が止まった。 「芸というものは、実と虚との皮膜にあるものなり。・・・虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、この間に慰みがあったものなり」 「皮膜の間」とは「区別することがむつかしいわずかの違い」という意味で、「慰み」とうのは「その場がなごやかになる」という意味らしい。 虚と実がないまぜになっていて、いずれが真とも判断できない劇を小屋にやってきた観客が楽しんだり、登場人物に自分を重ね合わせたりする。 これは、今まで自分自身が演劇で目指してやってきたこととまったく変わらない。 近松が身近に感じてきた。 虚と実の区別が最初からはっきりしているものはつまらない。 小手先ばかりで虚ばかりに先走り、実を曖昧にし、見え透いた虚と実にこだわる今の演劇にはもうあきあきしている。 「虚」にして「実」、これがいい。 今回の芝居作りの軸が決まった。 そして「けいせい仏の原」という作品。 この作品、脚本は残っていない。 狂言本という筋書き本が残っているだけ。 これがまぁ、面白くも何ともない。 本当にこれがかつて大当たりをとった芝居なのだろうか・・・。 しかし、面白くないと感じたのは間違いだった。 一見どうでもいい勧善懲悪な薄っぺらな筋に、現代人にはあまり理解できない社会批判、階級制度による賤民差別、色悪と呼ばれる反秩序的な主人公の存在等々、この芝居が上演された当時においてはタブーである事柄が作品の底辺に深く流れているのだ。 このタブーを作り手側がどうやって汲み取り、自分たちの血肉にしていくか。 それがこの作品を掴まえる鍵になるに違いない。 キャストとスタッフは再び東京と三国の合同チーム。 キャストは10人。 東京から5人、福井から5人、全てバラバラの個性を集めてみた。 東京チームは、この地で約40日間の共同生活を強いられる。 さて、今回の芝居作りにどんな結末が待っているのだろうか。 闘いは再び始まった。
演出家 中島陽典 nakajima yosuke プロフィール
1980年石井聰互の「狂い咲きサンダーロード」で映画デビュー。石井監督の「SHUFFLE」で主演。その後サラリーマン生活を経て、欽ちゃんの番組に レギュラー出演。以後、俳優としてテレビ、映画、舞台、CM等で仕事を続ける。’91年より、演出家としての活動もスタート。全ての作品の演出・構成を担 当し、「ZOO(共演:田口トモロヲ)」「Mme.george」「死の棘(主演:美加理/飴屋法水)」「HARVEST(主演:竹下宏太郎)」等を発表。最近ではCMのナレーション、シナリオ、エッセイ、映画評論などの活動も行う。 昨年、三国町で小劇場演劇の傑作と言われる北村想原作「寿歌」を脚色、演出し、大好評をえました。 福井では、昆布館のCMでおなじみです。
帯の幅ほど 三国湊
日本海に流れ込む九頭竜川河口に位置する越前三国湊(福井県三国町)。 古くは、「越の国」継体天皇の母・振姫生誕の地として、また江戸時代には、北前船が往来し、「帯の幅ほど」といわれた細長い町は、日本有数の湊町として栄えました。 井原西鶴が「北国にまれな色里」と書き記したほど格式が高かったといわれる花街文化や、商人・職人文化が華開き、その歴史文化の営みは、北陸三大祭りの 三国祭や、かぐら建てと呼ばれる独特の技法による木造建物に、そして、三国湊に住む人々の情緒に、今なお色濃く息づいています。 また、日本海の景勝東尋坊や神の島雄島などの豊かな自然、三国ブランドとして名高い越前ガニ・越前ウニをはじめとする日本海の恵みで知られる湊町です。
文学の町 三国湊
三国湊のもう一つの顔、それは全国的にも異色だと言われる、文芸に縁のある町だということです。 江戸時代中期の三国の遊女であり、越前を代表する女流俳人でもあった哥川が鮮烈な歌を詠い、高浜虚子の名作「虹」のヒロイン森田愛子が生まれ育ち、儚い人生を終えるまで師匠伊藤柏翠と交流を交わした地。 昭和を代表する詩人三好達治が萩原朔太郎の妹と愛憎まみれる壮絶な結婚生活を送りながら可憐な詩を発し、この地に生まれた高見順が愛した町。 岩佐又兵衛、多田裕計、皆吉爽雨、平澤貞二郎、畠中哲夫、荒川洋治、小野忠弘…、多くの詩人・作家が訪れ、あるいは住み着いて、数々の名作を生み出していきました。
三國湊 CHIKAMATSU祭! 三国湊でゆっくり過ごしませんか。
9月1日〜9日まで、近松門左衛門の映画上映会や展示会、また、文学の道をクローズアップした催しものなど、三國湊座を中心とし、三国町内で、「三國湊 CHIKAMATSU祭!」を開催いたします。 その他、東尋坊でのクルージングや雄島散策、旧市街地の町並み散策、夕陽がきれいな温泉、三国自慢の新鮮な魚料理、おろしそば、名菓酒まんじゅうや鶯餅等、見どころたっぷりの三国で、どうぞごゆっくりお過ごしください。 宿泊所や交通手段の詳細、観光スポットのご紹介も承っております。 お気軽にお問い合わせ下さい。