9月の森の勉強会「福井の森 伊勢神宮の森」開催しました

カテゴリー:みどリレー通信, 勉強会

2009.10.07

講師:稲葉充利さん 3人の人が抱えたよりも太い木に登り、木を伐る写真。 だるまおとしの様に真横でスッパリ伐られ、幹が宙に舞う写真。

人間に対してあまりに大きな木を伐る、その迫力は写真を通しても伝わってきました。 30歳まで東京で働き、福井に帰ってきたとき、外で働く仕事をしたい。 そう思ってハローワークで選んだのが今の仕事、森林組合。

木を伐る仕事は「汚い」・「きつい」・「危険」の3Kと言われ、若者からは敬遠され、人材が不足していた。 「汚い」のは自然相手の仕事だから汚れるのは仕方ない、「きつい」けれど歳をとってもできる仕事だと納得できた。 「危険」な仕事ということに関しては、自分を納得させる理由が見つからなかった。 高所の仕事、チェーンソーを使う仕事、大きな木を間近で伐る仕事・・・危険なことばかり。 実際仲間が亡くなる事故もあり、逃げたいと思ったこともしばしばあった。 結局今でも続けているのは、うーん・・・なんでだろうか。 自分でもわからないけれど、死を避けることはできない、ということからかな。 ちょっぴり困った顔で話す稲葉さん。

伊勢神宮に行くきっかけは「林業新知識」という1冊の本。 偶然見た神宮の太いスギの木を伐る1枚の写真に魅せられて、こういうことをやってみたい!と思い、電話帳で調べて親方に直接お願いした。 親方の仕事は、伊勢神宮の参拝者や神宮に危険のないように手入れをすること。 (伊勢神宮の遷宮に使われる木材は、伊勢神宮の森林組合が管理していて別の仕事) 樹齢300年や400年の巨木に登り、チェーンソーで伐り、クレーンで吊り上げて、木を切り分けていく作業。

400年から500年の木の幹は6メートル、高さ60メートル。 1人で登るには半日かかるので2人で登る。クレーンが入れればいいが、下に建物があるときは、クレーンは入れない。 そんなときは枝を少しずつ伐って、幹だけにする。 これがすごく揺れる。 木は枝を伸ばすことで大きな体を支えているんだなあと感じる瞬間。 幹だけを3-4メートルで伐り、滑車をつけて少しずつ降ろす。 この塊が200キログラムあるから、一歩間違えば潰されてしまう。 ここで稲葉さんは不思議な感覚に襲われるという。 人は滑車の反対側で木を切り、人間と反対側に木材を落とす。 木は木を伐る人つまり自分を殺す人間を守って殺されていく。 そういう感覚をしばしば感じる。 例えば崖の草木を刈る仕事。登っていくとき助けてくれた草木を伐る。 こういう感覚に陥ると、だんだん木が自分の中に入ってくる感覚になる。 自分が生きているのは命をもらっていること。 親方の言葉に、「木に礼儀を示すと木に気に入られる。木が気を呼ぶ」というのがある。 伊勢神宮の木を切る前日、切る予定の木の横に苗を植えて、翌日苗を植え替える。 木の霊を移してから伐る礼儀である。 また、伐木した木の切り株に梢をさす。 木に対する礼儀で根っこは返しますよ、という意味か。 そして木の切り面に関して、まっすぐ伐ることで美しい木の表情を出すのも礼儀。 親方と仕事をしていて教えてもらったり、感じた木に対する礼儀。親方が何回も言っていたのは仕事は逆算してやれ、ということ。 命がけで、体力も使い、チームワークが大切な仕事。 中途半端な仕事や計算ミスは事故や怪我や命を失う原因になる。 礼儀というのは仕事を丁寧に行うことにつながる。 会場に緊張感が走り、自分も木に登ったり、親方に言われているようなピンと背筋が走る空気が流れる。

ところで。長くまっすぐ伸びるので建築材として人工林で育てられるスギとヒノキ。 どう違うかわかるかな? うーん?と考える。

森林組合ではこのスギとヒノキの手入れをするのが仕事。

スギは一般建築によく使われ、ヒノキは神社などに使われる香りの良い木でヒノキ風呂などにも使われる。 よく似ている木だが、まっすぐ育つスギに対して、ヒノキは右に曲がり、左に曲がりバランスをとりながら伸びていくという。

稲葉さんの話によると、スギは谷や水の多い場所に適して育つ。 山の地形では1番下の場所だから早く上にのびて光を浴びようとまっすぐ育つ。 一方、ヒノキは風のあたる尾根で水の少ないところに適して育つ。 風が強くあたり、揺れることに対して、幹をしなやかにまっすぐ立てるように育つ。 ヒノキは人の背骨に似ていると稲葉さんは思う。体を支え、外からの圧力に対応し、バランスをを保っている。 ヒノキを水の多いところに植えると漏脂病になる。 これは栄養が多いことが原因で起こると本にあるが、これも人と似ていると思う。

人の体の構造と似ている木、似ていない木の区別があるなんて考えてもみませんでした。

そういえばさ。 年輪って内側から増えると思う?外側が増えると思う?稲葉さんの質問。 木の1年の成長が年輪。

うーん?どっちだっけ?

芽がでて、その芽が地面に根っこを下ろすイメージで考えてみて。 年輪は外側にドンドン増えていくよ。

じゃあ真ん中はどうなっているか? 木で生きている部分、水や養分を吸収する場所は周りの数センチだけで、中身は死んでいる場所。 周りが生きて守っているから中身は死んでも腐らない。 木は生の中に死を含んでいる存在なんだ。 年輪幅が狭い木は、込み合っている森で育ち、生存競争をうけた木で腐りにくく強い。 年輪幅が太い木は腐りやすい。

人間の育ちにも通じる部分がありそうじゃない?

日本の木、福井の木の問題は売れないことにある。 外国で伐って材にして運んできた木に対して、日本の山で伐って材にした木は2割ほど高い。 50年前に植えたスギ・ヒノキは手入れをする時期に来ているが、手入れをしても利益がないことから放置されいる。 40年前、木は1本1万円だったが、現在1/4の2500円。給料は10万から4倍の40万。 感覚として1/16の価格になった。

昔は100年の木を1本売ると家族が1ヶ月食べていけたという。 スギを10本売れば月収くらいだったが、今の2万円くらいではお小遣いくらいか。 スギ・ヒノキは植えて6年ほどは毎年夏に下草を刈り、10年20年30年に間伐といって間引いていく作業をする。 この間伐が行われないと、浅い根のスギは倒れ、土砂崩れの原因ともなりうる。 20年30年というとそこそこ大きく作業も素人ではなかなか危険である。

そこで仕事を依頼されるのが森林組合。 山主の依頼で間伐し、下草を刈り、木を切り、材にして、林道をつけ、材を製材所に運ぶ。 素人で1番大変なのが材を運び出すこと。 現在、補助金をつけて林道をつけて、重機を使って木を材にしようと国が補助しているが、国産材自体の需要がく売れない。 森林組合は仕事の依頼を受けて人工林の森の手入れや収穫を行うプロであるが、山主や国の依頼がないと働けない。 国と地主が日本の森をどう考えるか、日本の国民が森をどうして行きたいか考える時期に来ていると思う。

この仕事をしてて、スギやヒノキを伐っているとき木の粉が宙に舞う。 それが太陽の光に当たるとキラキラしてダイヤモンドダストというかなんともキレイで、祝福されている感じがする。 幸せな瞬間だなあとおもうよ。

人間よりも明らかに大きな木を倒すということは常に危険と隣り合わせの仕事。 動かない、しゃべらない木。 物である。 だけどそこには命がある。 命と命が触れ合うギリギリの世界で見えてくるもの・感じるものがある。 稲葉さんが伊勢神宮に魅かれたのは偶然ではなく必然だった。 木の世界、ちょっと遠い世界と思っていたけれど。 日本の森をどうするか、福井の森をどうするか。 考える時期に来ている。

三国の森で採れた杉・ヒノキで雄島の神社の修理をできるなんてステキなんじゃないかしら?!

そのときはみどリレーもぜひぜひ参加したいなあ、なんて夢を馳せた夜でした。

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