カシノナガキクイムシによるナラ枯れの調査を行いました(2012年3月14日　)

2012年3月14日　

カシノナガキクイムシによるナラ枯れの調査を行いました。

 

今回は坂井農林事務所の三浦さんと共に、以前お世話になった事のある樹木医の井上先生が来てくださいました。
色々とお話をしていただき、新しい発見も多くありました。

 

昨年から、樹齢50年ほどのコナラの木8本ほど、にカシノナガキクイムシ(以降カシナガ)が入りました。

森の中で一番被害が大きかったものを2月に伐採し、椎茸のほだ木にしました。

木の下部2mほどは密集して穴があいていたので、薪として利用する事にしました。

コナラはカシナガの被害があっても、枯死に到る事が少ないとの事ですが、被害木から優先的に伐採してゆきます。

ラーバンの森では、ビニールでの防除や、薬剤注入、薫蒸処理などの対策はしない事にしました。

里山での本来の、薪炭林・ほだ場として計画的に利用してゆくつもりです。




切り株を見ると黒く変色している部分が、カシナガが媒介するナラ菌が回った様子です。

カシナガはまず横穴を開け中心部を目指すのですが、卵がかえると幼虫たちはさらに掘り進み、縦穴も掘り広がってゆきます。

そして成虫が媒介して繁殖したナラ菌を餌に成長していきます。

切り株にも多くの縦穴が確認できました。

割ってみるとあちこちに穴があいていて幼虫がポロポロと出てきました。

 

ここで一つ不安になるが、木を倒して、椎茸のほだ木や薪とした場合、結局6月頃になると木から多くの成虫が出てくるのではないかと言う事です。

これに関しては、カシナガはナラ菌を餌とするので、ほだ木や薪とする場合、乾燥などによりナラ菌にとってあまり適さない環境になるため、菌の繁殖ができず、幼虫も成長できないとの事でした。

またナラ菌は生きた細胞から栄養を吸収するそうです。

椎茸のほだ木とする場合、ナラ菌や雑菌の繁殖の前に早めに植菌した方がよいそうです。

 

もうひとつ心配しているのは、穴が開いた数からみると、毎年被害が爆発的に増えるのではないかと言う事です。

これに関しては、ミズナラの場合は被害が爆発的に増える場合があるそうですが、コナラはそこまで増えた報告はないとのこと。

現在ラーバンの森周辺ではコナラの森のため壊滅的まではいかないだろうとの見解です。

 

樹液が目で見えるほどふきだしている被害木がありましたが、これは木が健康なため防御反応により自らを守っていると思っていたのですが、頂いた資料でのデータによると、やや若い被害木でカシナガのあけた穴から褐色の樹液を吐出する事があるが、樹木が防御反応によって樹液を出しているのではなく、ナラ菌が回った事により木の導管が目詰まりを起こして樹液上昇が妨げられカシナガが開けた穴からしみだしているそうです。

今の所どちらとも言えませんが注意深く様子をみます。

 

　

上の写真の様な幹にあるこぶは、カミキリ虫が入って幼虫が内部を食べて空洞になっているそうです。

割ってみるとその通りで内部は腐食していました。

木の上部にカミキリ虫が入った所などでは、台風などのあと大きな枝がごっそり折れてしまう事もあります。

ラーバンの森周辺のコナラ林は樹齢60年ほどになり、木が込み合っていたため枝葉は上部についているだけとなっている物が多く、コナラの森としては高齢な部類に相当します。

 

今後の方針としては、この森では薬剤注入やビニールの巻きつける処置や薬剤薫蒸処理などはしません。

様々なイベントなどでも利用するため、いわゆる里山の公園型整備と言う状態になっているのですが、できれば計画的に利用伐採し更新させ、森を若返らせてゆきたいと考えています。

切った木は、椎茸のほだ木や薪として利用できます。

今年の春からの新芽の様子などを見ながら、秋～冬にかけて部分的な伐採を実験してゆければと考えています。

ドングリの苗を作って植樹も試してみたいです。

里山・雑木林などに関しては、この辺りではあまりデータがないそうなので、樹木医の先生方と共に色々と試してゆければと思います。