2月の森の勉強会~野生動物と自然環境~開催しました。

カテゴリー:みどリレー通信, 勉強会

2010.03.02

2月の森の勉強会 2010年2月22日

テーマ:野生生物と自然環境 講師:鈴木隆史氏(越前松島水族館館長)

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さて、今日は水族館の活動を中心にお話をしたいと思います。
水族館では、教育、研究、自然保護、レクレーションなどの役割があります。
この陣ヶ岡丘陵地一帯は残したい里地里山「福井県重要里地里山30選」に選ばれています。
知っていましたか?

里地里山陣ヶ岡 http://www.fncc.jp/shiryo/satochi_satoyama/7.pdf

これは希少生物の生息個体数により指定されました。

陣ヶ岡の湿地・池・小川には県のレッドデータブックに掲載されている希少種のメダカやホトケドジョウ、シャープゲンゴロウモドキなど生物34種が生息しています。 以前道を作るのに埋め立て予定の湿地でしたが、調査の結果ホトケドジョウの生息が確認され、迂回して道を作ることになりました。 このドジョウはきれいな湧き水のある池に生息し、口ひげが8本あるのが特徴です。 以前緑のリレープロジェクトが活動した地域にはシャープゲンゴロウモドキが生息しています。 これは県内3箇所にだけ生息が確認されています。 陣ヶ岡丘陵地はきれいな湧き水がある場所が残っていることで、他では生息できなくなった生物が生息しているのです。 トミヨ、という魚が県のレッドデータブックに指定されています。

福井レッドデータブック http://www.erc.pref.fukui.jp/gbank/rdb/rdbindex.html

ある地域でコンクリートの用水路にしたところいなくなりましたが、用水路を土にもどしたところこの魚が戻ってきました。 生物は大きな環境の変化に対応できず滅びてしまいますが、環境を保護すること・整備することで絶滅を免れることができることがあります。 「外来種」という言葉を聞いたことがあると思います。 外国から入ってきた生物のことです。 動物愛護法という法律でワニなど危険な動物は特定動物と指定され、飼育するには県知事に届出の義務があります。 特定外来生物は基本飼育禁止です。 飼育するには県知事の許可が必要でマイクロチップの挿入が義務化されています。 問題になっている特定外来動物は、アライグマ、ヌートリア、ブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ(ウシガエルの餌)、カミツキガメ、ワニガメなどがあります。 これらは人間の都合で野に放たれ、繁殖・増殖し、その地域で生活していた固有主の生態系を脅かしています。

先ほど、「メダカ」が希少種だという話をしました。 メダカはペットショップで販売している。 自然に少ないなら人口繁殖して放てばいいではないか、と思うかも知れません。 北海道から福井・京都の北日本と関東から九州にかけての南日本のメダカの個体群は遺伝子レベルで違うのです。 これらを一緒に育てると交雑して、その場所固有のメダカは絶滅してしまいます。 例えば、イノシシが里山に降りて田畑を荒すのは餌不足が原因だ、では餌のドングリを撒こう!と別の場所で拾ったどんぐりを撒くと、その場所で生育しているドングリとは別の遺伝子のドングリの芽が出て生長して将来交雑してしまう。 外国からおもりとして運んだ水にプランクトンが混じっていて海に水を捨てることで繁殖したり、毒蜘蛛が紛れこんだり・・・。

現代は流通が発達しすぎて予想外の生物が入り込む可能性が普通にあります。 気を使っても気を使っても入ってしまう。 大きくみて地球全体レベルで見ればいいじゃないか、という考え方もありますが、遺伝子レベルで種を守ろう、地域を守ろうという考え方。 そういう視点で水族館は自然保護活動を行っています。

初めて見た魚をどうやって飼育するか。 水族館の試みはここから始まります。 魚には水質と水温、特に水温が重要です。 例えば越前カニは水深200メートルの地域に生息しています。 この水深200メートルですが、地域によって水温が違います。 日本海側なら2℃ですが、太平洋なら8℃、沖縄なら20℃。 水温を決めるとき、生息地域を特定することは重要になります。

南から流れる対馬海流に乗って日本海に流される魚を死滅回遊魚といいます。 キハッサク、ウツボ、ハリセンボン、キタマクラ、マンタ、イトマキエイ、チョウチョウウオ、スズメダイ・・・。

多くは南の暖かい地域に住む魚が暖流に乗って日本海に流れ着き、最適温度が見つからず死滅します。 生息できる地域があれば住むことができるので、その地域の環境のバロメーターともなります。 例えば原子力発電所の排水口の周囲には温水が排出されるので、周囲より水温が高く、生息できる場所なっているなどがあります。 海流に乗ってやってくる生き物に、エチゼンクラゲがあります。

エチゼンクラゲは10年に1回大量発生することが以前から知られていました。 中国の渤海・黄海周辺で発生すると言われ、日本海を成長しながら浮遊し、日本海にたどりつきます。 底曵き網や定置網にかかり、網を破るなど被害が大きく問題となっています。 問題となっている原因は何か? 中国沿岸部の人口増加により富栄養化が進み、プランクトンが大量発生し、エチゼンクラゲの大量発生につながり、海流により日本に流れ着き問題になっている、と言われています。 日本全国の水族館で「エチゼンクラゲを大きくしよう!プログラム」というのがあります。 越前松島水族館でも挑戦していますが、今のところ幼生の笠10センチ程度までの成長がやっとです。 クラゲの飼育は難しいのです。 エチゼンクラゲのえさが何なのか、よくわかっていないのです。 水族館で展示しているエチゼンクラゲは3日で笠が崩れて、1週間でバラバラになってしまいます。 餌がわからないから食餌ができないので仕方がないのです。 餌の説ですが、先ほどのプランクトン説、もう1つがヘドロの有機物ではないかという説があります。 水族館では定期的にクラゲを交換して展示しています。 水族館が保護してきた生物です。 1999年3月にオットセイを保護し、6月に沖に放しました。 オットセイはオットセイ条約で飼育してはいけないという国際ルールが定められています。 ウミガメの保護にも力を入れています。 ウミガメは6種類いますが、太平洋側の砂浜で産卵し、太平洋を回遊し、10年後産卵のために日本に戻ってくるといわれています。 ウミガメの産卵場所はほとんど太平洋側で、日本海側は珍しい。福井で今まで2例確認されています。 これも先ほどの対馬海流に流されて、日本海側にたどりつくのでしょう。

水族館の生きものを紹介します。 ミズタコです。

タコのオスメスの判別方法を知っていますか? タコは左右に足が4本づつあります。 オスはそのうち1本の脚先端が交接器で、吸盤がありません。 メスの体内にカプセルを送り込みます。 メスをカプセルを受け取り、すぐには産卵せず、1~2ケ月持っています。 産卵したときカプセルをかけて受精させます。 10-15度の水温でメスは産卵し、半年間ほとんど食べず卵を守ります。 そして半年後卵が孵化すると母タコは最後に命を落とします。 コンペイトウといいます。

エチゼンカニの網に入ります。 深海の魚で水揚げされるとき内臓圧迫されることが多く、育てるのが大変難しいです。 このコンペイトウで越前松島水族館は初の人工繁殖に成功し、繁殖賞を受賞ました。 繁殖賞は始めて赤ちゃんを出産し、6ヶ月飼育できたことに送られる賞です。 大きいコンペイトウの個体群では何回しても繁殖しませんでした。 コンペイトウの中に小さい個体がいることに着目し、大きい個体とペアにしたところ繁殖しました。 小さい個体がオスだったことがわかりました。 ホッコクエビ、甘エビです。

春先、卵を持っているメスの甘エビが店頭に並びます。 全部メスなのを不思議に思ったことありませんか? 実は卵を持っているのが当たり前なのです。 ホッコクエビは性転換をします。 小さいときはオスで成長するとメスになります。 魚には性転換する種類が多くいます。 コブダイ、クロダイ、クマノミも性転換します。 クロダイの小さいのは「チン」と呼ばれますが、小さいクロダイはオス、大きいクロダイはメスからそう呼ばれているのでしょう。 クマノミは群れで最大のものがメスで、その個体が死ぬと次に大きい個体がメス化します。

このように水族館では、野生生物の種の保存、血統登録、餌の量把握、個体識別など研究と野生動物が生息できる自然環境を保護する仕事、海岸清掃、地引網、磯遊びなど環境、教育、レクレーションなどの提供を仕事としています。 何か質問はありませんか? 〇水族館の餌は何ですか? 貝、エビ、サバなど20種類を冷凍保管の商品を与えています。 イルカやアザラシは1日に200キログラムのさばを食べます。 魚は脂が乗っていない小さいほうがいい。 脂が乗っているとお腹を壊す原因になります。

本日はありがとうございました。また水族館にも遊びに来てください。

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2月の福井新聞で見た残したい里地里山に私たちが住む、そして現在のみどリレー活動場所でもある三国町陣ヶ岡丘陵地が入っていてびっくりしました。 ここにしかいない生物が住んでいる。 だから残したい地域。 木の名前は少しずつわかってきたが、植物や昆虫となるとまだまだ勉強不足。 今日の勉強会をきっかけに森の生物と出会うのも今後の活動の楽しみになりました。 去年の夏、水族館が主催する地引網に参加しました。 網に入った魚の解説を水族館の学芸員さんが丁寧にしてくださったのが印象的です。 子どもたちも大喜びで単なる体験活動ではなく、体験と学習が一体化している面白さを感じました。 そういえば網の中にハリセンボンがいました。暖流対馬海流に乗って三国に来ていたんだなあ。 水族館の生物の話に興味深々でした。 1つ1つの展示にストーリーがあるんだろうなあ、私たちが見れる水族館は、その苦労の結晶。 早速水族館に行ってみたくなりました。

越前松島水族館  http://www.echizen-aquarium.com/

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