アート

三国湊の路2009—現代アートと文学のアジール—

2010.01.15  by

様々な人・モノが行き交い、包みこんできた湊町三国は、「全国にして異色のある文学のまち」とも言われてきました。2009年夏、若手アーティスト達が、三国湊に縁のある文芸人やその作品にインスピレーションをうけ、風土や人情を浴びて作品を制作し、三国湊の路に展示します。江戸時代から変わらぬ路筋が、現代アートと文学のアジールとして浮かび上がります。

「あなたに捧ぐ—」

アーティスト 佐合道子 SAGO MICHIKO × 江戸時代の遊女・俳人 哥川 KASEN

「圓」

アーティスト 土方大 HIJIKATA DAI × 昭和を代表する漂白の詩人 三好達治 MIYOSHI TATSUJI「昨日はどこにもありません」

会期=2009年8月29日(土)〜9月13日(日)

屋外展示 佐合道子=旧岸名家/土方大=松ヶ下西光寺左向かい空き地

・福井県坂井市三国町旧市街地(北本町・南本町)界隈
・期間中、常時展示しています
・9月5日〜6日には「三國北前ストリーム」イベントが開催されています

[ 主 催 ] NPO法人三国湊魅力づくりPJ
[ 共 催 ] 三國北前ストリーム実行委員会
[ 特別協賛 ] アサヒビール株式会社
[ 助 成 ] アサヒビール芸術文化財団

チラシがこちらよりダウンロードいただけます。(PDF)

 

「あなたに捧ぐ—」アーティスト 佐合道子 SAGO MICHIKO

=素材= 磁土 釉 オーガンジー

=コンセプト=

生まれながらに持つ美貌・品格、 それとは対象的に垣間見せる、幼子のような人懐っこい表情。 彼女の生活や仕事ぶり、俳諧からは、謙虚さや直向さが窺われる。 それらの彼女が元来持つ魅力は、 遊女(又は小女郎)を生業とする身において、 自身を助け、徳をもたらしただろう。 しかしこれは、ただただ生き抜いていくために必要だったとも言える。 そして、あの打掛は、彼女の品格を言葉なくして表したものだったに 違いない。 麗しき女性、哥川。 私もまた、数多の男達と同じように、あなたの虜になってしまった。

=制作過程において感じたこと=

私もまた、過去の作家達と同じように、生活を愉しみ、流れ行く空気感を味わい、仲間と喜びを分かち合った。 それらは作品制作において、なくてはならないものであり、また良いスパイスにもなる。 「 あなたに捧ぐ—」は三国の雰囲気や人との交流を体感したからこそ完成した、言わば佐合道子と三国の合作なのだと思う。

=三国に来て思ったこと、印象=

「三國」は「魅國」である。 何日か滞在する中で思ったことは、この町を知ることができてよかったということだ。 金沢〜三国間は何度も行き来したが、三国の町に入るといつも感じるのが、安心感であった。 そして、何度同じ道を通り、建物を眺め、風景を感じても、初めて三国をおとずれたときと変わらない印象と感動があった。こう感じるのは、私だけではないのだろう。 とても栄えた湊町であったこと、多くの文学作品が生まれていることからもわかるように、ここを訪れる人は皆そう感じているのだと思う。 この「魅國」が湊町として栄えた当時と同じように、旅人を癒す存在になることを願うと共に、私が滞在し、制作した作品が、そのきっかけの一部となることを祈る。

=プロフィール=

1984 三重県生まれ
2009 金沢美術工芸大学工芸科陶磁専攻 卒業 同大学美術工芸研究科陶磁専攻修士課程 在学
2006 金沢21世紀美術館 -日比野克彦 明後日朝顔プロジェクト- サポートスタッフ/明後日朝顔新聞社特派員
2008 New Car Seat Design Project(帝人テクロス) 九谷焼デザインコンペティション 入賞

=自分と自分の作品についてひとこと=

焼き物を学び始めてから‘なぜ作るのか’‘何のために作るのか’をよく考えるようになった。そして、いくつかきっかけになることがあり、自分の死や人生について考えるようになった。そうしたら、死ぬのが怖くなった。痛みが伴うかもとか、意識が終わるとかそんなことではなく、存在がなくなることに。普通に生きて普通に死んでいったら自分の死後、親族や友達に覚えられていたとしても長くてせいぜい5-60年だろう…。そんなの嫌だと思った。私はとっても寂しがりやで、無視されたり、忘れられることが一番怖い。私は死後最低でも2-300年間はなるべく多くの人に私が生きていたことを、存在があったことを覚えていてほしい。そのために作る、というより作ることを選んだ。

「圓」アーティスト 土方大 HIJIKATA DAI

=素材= FRP ウレタンフォーム 塗料材

=コンセプト=

「文字」。逆に並び替えて「字文」。 「ジブン」。「自分」。 人は自分以外の者に何かを伝える時 声を発する。 文字を書く。 ジェスチャーで表現する。 絵を描く。 等々の表現方法がある。 詩人はその中でも文字で自分を表現する。 日本語ならば50音。 たったそれだけの種類を詩人が並び替えるだけで文字の羅列が色を放つ。 三好達治の「昨日はどこにもありません」 この詞から昨日という過去は、今日という現在とは隔絶されているけれど、 私は昨日という過去の私の集合体で今日の私が構成されているのだと思うのです。 私は昨日と今日の私をつれて明日の私になります。

「昨日はどこにもありません」三好達治

昨日はどこにもありません
あちらの箪笥の抽出にも
こちらの机の抽出にも
昨日はどこにもありません

それは昨日の写真でしょうか
そこにあなたの立っている
そこにあなたの笑っている
それはきのうの写真でしょうか

いいえ昨日はありません
今日を打つのは今日の時計
昨日の時計はありません
今日を打つのは今日の時計

昨日はどこにもありません
昨日の部屋はありません
それは今日の窓掛けです
それは今日のスリッパです

今日悲しいのは今日のこと
昨日のことではありません
昨日はどこにもありません
今日悲しいのは今日のこと

いいえ悲しくありません
何で悲しいものでせう
昨日はどこにもありません
何が悲しいものですか

昨日はどこにもありません
そこにあなたの立っていた
そこにあなたの笑っていた
昨日はどこにもありません

 

=制作過程で感じた事=

今迄の過去の自分と向き合い、明日の自分の為に何が出来るかの試行錯誤。

=三国の印象=

日本にいて日本ではない様な印象がありました。 陸地で繋がっているけれど島のような独自の文化があり、歴史がある。

=プロフィール=

1989 愛知県名古屋市生まれ
2004 愛知県旭丘高校 美術科入学
2004 旭美展 入賞 愛知県立美術館ギャラリーH室
2007 金沢市立金沢美術工芸大学 彫刻科入学 現在 同大学在籍 彫刻3年 ミクストメディア専攻
2008 欅展 出品 愛知県立美術館ギャラリーJ室
2008 KACOA(金沢美大アート&デザインショップ)企画運営 DDI特別賞受賞 北國新聞社社長賞
2009 欅展 出品 愛知県立美術館ギャラリーJ室

=自分と自分の作品についてひとこと=

普段作品を作る時の動力にしているのが感情の起伏になります。何か自分を揺さぶる出来事に対しその時の自分の思いを切り取り作品に写し取ります。作品は自分の分身であり、我が子のようなものであり、何処かしら自分の要素が入った作品が多いです。具象的な作品ではなくデフォルメを加えた抽象的な形態なのも記憶からのイメージなので鮮明ではなくそこから美しいと思えるラインを試行錯誤しながら掘り出しています。

江戸時代の遊女・俳人 哥川 KASEN プロフィール

1700 年代の遊女であり、越前を代表する女流俳人。「哥川」とは俳号であり、源氏名は「泊瀬川(もしくは長谷川)」、本名「ぎん」。出村の荒町屋七左衛門の抱え遊女で、享保10年の『御巡見控』に「滝谷、出村 町数十二、家屋三百七十 遊女八十五人 流行長谷川」とある。また、『続近世畸人伝』にも哥川の名がある。哥川は荒町屋の遊女を退身した後、自ら「豊田屋」という新しい店の主人となり、遊女屋を経営。その後、豊田屋を二代目長谷川に譲り、滝谷寺の境内に庵を結び、世にその剃髪を伝え、滝谷尼と称し、隠棲する。謎が多い哥川ではあるが、現在、哥川の俳句は116句あり、その中で間違いなく哥川のものと認められるのが約60句ぐらいとされている。俳人としての哥川は、加賀の千代をはじめ、名古屋の蓮阿坊白尼や時節庵八亀など、他国の俳人との交流もあり、遊女から身を引く三年前には江戸に百日あまり滞在し、俳諧・点茶・琴・香・花などをもって交流している。基本的に三国の遊女には高い教養が求められるものの、哥川においては俳諧という群を抜いて優れたものが存在した。(哥川の俳諧と書の師は、永正寺第十七世の永言(俳号・巴浪)である)。

昭和を代表する漂白の詩人 三好達治 MIYOSHI TATSUJI プロフィール

1900 年-1964年。大阪府出身の詩人。昭和19年より5年間、三国湊にその居を定め、自身、三国を「わが心のふるさと」と呼ぶほど親しんでいた。その間は待ち望んだ最愛の人(萩原朔太郎の妹アイ)との生活、そして別れを経験するなど、彼の人生においても波乱に満ちた時期だったとも言えるが、それが故に、この時期に生み出された「故郷の花」「砂の砦」などの詩集は、彼の豊かな感性、知性を見事に表現した代表作とも言われている。現在でも三国湊には東尋坊や住居跡に三好達治の歌碑が建てられおり、また三国高校や大野高校の校歌を作詞するなど、県内の至るところでその足跡は残されている。 (あそびーのフクイ ウェブサイトより転載)

page top

HOME

おうちでも三国湊 おとりよせ WEB SHOP

魅力づくり・にぎわいづくり・まちづくり

味・三国湊きたまえ通り
ジェラート&スイーツ カルナ
三國湊座
カフェ タブノキ
ツーリズム
街中散策・レンタサイクル・クルージングは一般社団法人三國會所のWebサイトへ
文化・歴史・アートへのとりくみ
イベント・シンポジウムなど
アートプロジェクト
三国湊の路
上映会・お芝居
日本風景街道
「三国湊のまち・海・みどり・そしてひとを結ぶみち」
エコへのとりくみ
三国湊こどもエコスクール・
WSなど
みどリレー
ナホトカ号重油流出事故から10年「三国湊型環境教育モデルの構築・普及活動」
ものづくり
荒磯染
陶芸ひとひろ

よみものページ

歴史文化・自然
三国の魅力:特集記事
連載・コラム
つれづれダイアリー
Hanaちゃんのみくにな理由
コマイヌソムリエ
NPOメンバーBLOG
Mr. Uede BLOG
三国湊自惚鑑・新"ほやとこといの"
Mr. Kasashima BLOG
越前三国湊の散策日記
Mr. Sumi BLOG
musicマスターのつぶやき
お知らせ
お問い合わせとアクセス

三国湊魅力づくりPROJECTについて